2016年8月、中国最大のライドシェア会社「滴滴出行(Didi Chuxing、ディディ・チューシン)」は「Uber(ウーバー)」の中国事業である「Uber China(ウーバー・チャイナ)」を買収することを決定しました。このニュースは中国のみならず全世界でも話題となりました。
今回、Cheetah Global Labでは、自社がもつビッグデータを元に「滴滴出行(Didi Chuxing、ディディ・チューシン)」と「Uber(ウーバー)」のM&Aを独自分析いたしました。
1.中国で人気のタクシーアプリ、「滴滴出行」と「Uber」
本年1月にご紹介した「タクシーアプリの最新事情」(https://ad.kingsoft.jp/column/taxiapp)の内容は大きな反響がありました。その中で、「滴滴出行」は2015年2月に、同国内のタクシーアプリである「快的」を吸収合併することにより、「滴滴出行」のアクティブユーザー数がピークを迎えたことや、その後は一時的に落ち込んだものの、7月以降に再び数値が回復してからは、高水準を保っていることなどをご紹介いたしました。
また、当時「Uber」のアクティブユーザー数は「滴滴出行」の1/7ほどで両社のアプリは大きな差がありました。
タクシーアプリのカテゴリで「滴滴出行」は常時1位なのですが、タクシー配車アプリのユーザー数は他のカテゴリーよりかなり少ないため、当時、「滴滴出行」はアプリマーケットで140位程度で、100位内にも届いていませんでした。
2015年当時の「滴滴出行」と、「Uber」のアクティブユーザー数は以下になります。
※データ集計:2015年12月14日 中国市場
その後、2016年Q2中国アプリランキングでは、「滴滴出行」は中国アプリランキングで70位となりました。「Uber」と「滴滴出行」のアクティブユーザー数は、差が1/3ほどに縮まりました。「滴滴出行」と「Uber」の両アプリは、2016年には大きな成長が伺えます。
※データ集計:2016年7月14日 中国市場
上記データは2015年12月14日から2016年6月14日までのアクティブユーザー数の推移です。両アプリとも2016年にはかなり早いスピードで規模が拡大しているのが読み取れます。2016年7月には「滴滴出行」のアクティブユーザー数は1.09%、「Uber」のアクティブユーザー数は0.37%と大きく上昇しています。
それでは、両社M&Aの背景をUberと滴滴出行のそれぞれの目線から推測します。
2.M&Aの背景にあるのは資本力
Uberが最も重視してたのは、間違いなく中国市場です。
2016年7月にM&Aの噂が流れたとき、「Uberは滴滴(出行)に吸収合併されるのでは?うそだ!」といわれるのが大方の反応でした。
人口から見ても、中国はアメリカ以上にUberの有力なマーケットになる可能性が高いと言われているため、赤字を出してもサービスを続けるであろうと考えられていました。
それではなぜ、Uberは中国で滴滴出行に迫りつつあるなか、買収されるという形になったのでしょうか。
噂によると、Uberは上場を目指しており、投資家は中国での赤字に不満を抱いていたと厳しい意見があるようです。何度も滴滴出行とUberとのM&Aの噂が出ては消えていました。結果的に、今回のM&Aは、中国での赤字経営の早期打破を投資家にアピールすることが視野にあった可能性も十分にありえます。
また、2016年7月28日、中国でネットタクシーに関する規則において、「ネットまたはアプリを通じてタクシーを利用することは法律で認められる」と正式に明記されましたが、クーポンサービスを多用しコストより低い運賃でタクシーサービスを提供する行為は禁止となりました。この規則は明らかに今回のM&Aに影響しました。この規則により、サービスを利用するユーザーが減る可能性があるためです。
このタイミングで、Uber株を保有する投資家にとっては、滴滴出行にM&Aされ株主になるのは懸命な選択ともいえます。
次に、滴滴出行が狙うのはグローバルな展開です。
実は昨年より、滴滴出行はいくつの会社(例えば、Ola、Lyft、Grab)へ投資し、グローバル戦略をすでに始めています。更に、2016年4月に、「滴滴出行」と「Lyft」のシステムを繋げ、中国の観光客はアメリカにおいても「滴滴出行」でタクシーを呼ぶことが可能になりました。しかし、海外全体で見れば、明らかにUberのほうが有利なポジションにいます。
「滴滴出行」が入ってなかったブラジル市場を例とすれば、2015年末までは現地のタクシーアプリがブラジル市場をほぼ支配していました。当時、「Uber」はタクシーアプリランキングで3位でしたが、2016年はもうすでにブラジルにおけるタクシーアプリで第1位になっています。
上記のように、Uberはすでに海外進出に成功しています。Uberに対して、「滴滴出行」は確かにこの部分では遅れをとっています。つまり、M&Aをすることでお互いの強みを生かし、更に拡大することが滴滴出行の狙いでしょう。
3.今後の動きに:成功を収めるか、失敗に終わるのか
滴滴出行とUberのように大企業のM&Aは、中国では頻繁にあります。
この一年間においても、大企業間のM&Aが幾つかありました。でも、M&A後の企業は、アクティブユーザー数を維持できないものが多く、他のアプリにチャンスに与えることになったケースも多々ありました。もう一つ注意すべき点は「Uber」アプリ自体の動きです。前例から見ると、買収された側が、徐々に衰退してしまうケースも少なくありません。
滴滴出行は前回の快適とのM&Aは成功したといえますが、Uberとはどうなるのでしょうか。前回のように今まで以上にユーザー数を増やすことができるのか。あるいはタクシーアプリの規則などの問題も重なり縮小してしまうのか、注意深く見守る必要があります。
4.まとめ
日本では、まだまだ小規模といえるタクシーアプリ業界ですが、中国では話題に事欠きません。今後、日本においてもどのような市場に変わるのかも気になるところですね。
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